カナダ雇用統計の弱さでUSD/CADが1.3700を回復、ドル買いも追い風
ドル高の背景
米ドル(USD)は、アメリカ合衆国の公式通貨であり、多くの国で事実上の通貨として流通しています。世界の外国為替取引高の88%以上を占め、2022年のデータによると、1日平均6.6兆ドルの取引が行われる、世界で最も取引量の多い通貨です。
第二次世界大戦後、米ドルは英国ポンドに代わり、世界の基軸通貨となりました。米ドルの価値は、1971年のブレトンウッズ協定で金本位制が廃止されるまで、金によって裏付けられていました。米ドルの価値に影響を与える最も重要な要因は、連邦準備制度理事会(FRB)によって決定される金融政策です。
FRBには、物価の安定(インフレ抑制)と完全雇用の促進という2つの使命があります。これらの目標を達成するための主要な手段は、金利の調整です。
FRBの金融政策とドル相場
物価上昇のペースが速すぎ、インフレ率がFRBの目標である2%を超えている場合、FRBは金利を引き上げます。これは米ドルの価値を押し上げる要因となります。インフレ率が2%を下回るか、失業率が高すぎる場合、FRBは金利を引き下げる可能性があり、これは米ドルにとってマイナス要因となります。
極端な状況下では、FRBはドルを増刷し、量的緩和(QE)を実施することもあります。QEとは、機能不全に陥った金融システムにおいて、FRBが信用供与の流れを大幅に増加させるプロセスです。
これは、銀行が取引相手のデフォルトを恐れて互いに融資しなくなるなど、信用が枯渇した場合に用いられる非標準的な政策手段です。単に金利を引き下げるだけでは必要な結果が得られない可能性が高い場合の最終手段となります。2008年の金融危機時に発生した信用収縮に対抗するためにFRBが選択した武器がQEでした。これは、FRBがドルを増刷し、それを使って主に金融機関から米国政府債を購入するというものです。QEは通常、米ドル安につながります。量的引き締め(QT)は、FRBが金融機関からの債券購入を停止し、保有する債券の満期を迎えた元本を新たな購入に再投資しないという逆のプロセスです。これは通常、米ドルにとってプラス要因となります。
市場への影響とトレーダーの視点
今回のカナダ雇用統計の悪化と、それに伴うUSD/CADの上昇は、短期的にはカナダドルの弱さを示唆しています。しかし、原油価格の動向もUSD/CADに影響を与える重要な要素です。カナダは主要な原油輸出国であり、原油価格の上昇はカナダドルをサポートする傾向があります。WTI原油やブレント原油の価格変動にも注目が必要です。
トレーダーは、1.3700のレベルをUSD/CADの重要な抵抗線として監視する必要があります。ここを明確に上抜けるようだと、さらなる上昇の可能性があります。逆に、このレベルで反落する場合は、短期的な売り戦略も考えられます。また、米国の金融政策の動向も引き続き注視する必要があります。FRBの利上げペースが鈍化する兆候が見られれば、ドル高の流れが弱まり、USD/CADにも影響を与える可能性があります。
地政学的なリスクも忘れてはなりません。中東情勢の緊迫化は、安全資産としてのドル需要を高め、USD/CADを押し上げる可能性があります。原油価格の急騰も、カナダドルにとってはプラス要因となり得ます。